母親と妹
二人は似ている。
まずこの人たちが一番大事にしてることは世間体だ。
家族以外にどう思われるかが最重要課題。
まだ若い頃に妹夫がポツリと言った 「れーこは外面はいいけど、家ではそうじゃないから」
知ってる。
二人が何を考えているのかまったくわからなかった。
小学生の頃の私は学校から帰宅すると、その日の出来事をよく母親にしゃべっていた。
母親は相槌を打つでもなく聞き流していたけど、一方的にしゃべった。
ただ「お腹すいた、お腹すいた。」と連呼した時には「餓え奴(かつえど)みたいなことを言うもんじゃない!」と叱られたが。
妹が学校の出来事などを、しゃべっているのを聞いたことがなかった。
思っていることを何も言わなかった。
母親が妹を贔屓するから、どうしたら私も好かれるようになるのか真剣に考えた。
二人のように考えていることを何もしゃべらないのが、好かれるコツかと推測したりもした。
母親は家族だけの時には、常に不機嫌な顔をしていた。
しかし親戚や他人がいれば、もうニッコニコで優しくて良い妻や母を演じていた。
妹も親戚や他人がいれば、おとなしくて良い子を演じていた。
普段は妹にわざと嫌がらせをされ、親には理不尽に叱られ、お前が悪いと言い続けられていて鬱憤がたまっている私は、親戚がいれば母親は怒らないし、妹もおとなしくなっているので、ここぞとばかりに普段の鬱憤をはらしていた。
母親から妹は「れーちゃん」と普通に名前で呼ばれていたが、気付けば私は「お前」と呼ばれていた。
外面が非常に大事な人なのに、親戚の人たちなんかがいたらどう呼ぶんだろうと観察していると、苦し気な顔でものすご~く言いにくそうに「・・すみちゃん・・・」
そんなに私を名前で呼ぶのが苦痛なんだ。
ある日私は大泣きして 「お母ちゃんはれーこばっかり可愛がってー! わたしのことなんて可愛くないんでしょー!」
母親 「子供が可愛くない親なんていない」
私が可愛いとはけっして言わなかった。